{
 "note": "AI に渡した場面のあらすじ。原文を読んだ作業役（Claude）が、原文の文を写さずに自分の言葉で書いた。AI（別の Claude）には原文を見せず、これだけを渡した。",
 "briefs": {
  "000794": {"voice": "三人称（三四郎の視点）。明治の口語体。", "synopsis": "秋、郊外の畑のそばの草地に、三四郎が美禰子と並んで腰をおろしている。空模様が変わって遠くから風が出てくる。日の当たる所が狭まった広い畑は、見ていると寒々しく寂しい。地面からの湿り気で体が冷えていることに気づき、よく今まで座っていられたものだと思う。自分一人ならとうに立ち去っていただろう。美禰子は、こういう場所に平気で座る女なのかもしれない、と思いかける。"},
  "000760": {"voice": "随筆。一人称「私」（漱石自身）。", "synopsis": "昔の教え子で「達人」という名の男が上京して私を訪ね、その晩、帰りの電車の中で別れたきり、日本の領土の北の果てへ戻っていった。私は彼を思い出すたびに、その名前がいかにも彼にふさわしく、天から授かったもののように感じる。そして雪と氷に閉ざされた土地で、彼がまだ中学校の校長をしているのだと思う。"},
  "043017": {"voice": "一人称「私」。大正の口語体。", "synopsis": "汽車の二等車で、向かいに座った田舎の小娘が、重い窓の硝子戸を開けようと苦労している。私は彼女への不快な気持ちを抱えたまま、その努力が成功しなければいいとでもいうような冷たい目で眺めている。そこへ汽車がトンネルに入る大きな音がして、それと同時に、硝子戸がとうとう下へ落ちて開く。"},
  "043016": {"voice": "三人称（少年良平の視点）。", "synopsis": "良平は若い土工二人と一緒にトロッコを押して遠くまで来た。竹藪の所でトロッコが惰性で走るのをやめ、三人はまた重い車を押し始める。竹藪はいつの間にか雑木林になり、上り坂には錆びた線路が落ち葉に埋もれている所もある。坂を登りきると、高い崖の向こうに寒々とした海が広がり、その瞬間、良平は遠くへ来すぎたことを急に悟る。"},
  "002257": {"voice": "一人称「私」。", "synopsis": "戸籍調べに来た巡査から、自分の妻は昔あなたの家で女中をしていた者だと聞かされた私。その女中のことを思い出し、思わず呻いて、玄関先にしゃがんだまま頭を垂れる。二十年前、のろまだったその女中に、子どもの自分がした意地悪のひとつひとつが鮮やかによみがえり、いたたまれなくなる。"},
  "000275": {"voice": "一人称「私」。少女の独白体。", "synopsis": "夜。母は朝早くから出かけていて疲れているだろうから、私より先に寝る。私は母の布団を直してやり、裾のあたりを軽く叩いてやる。母はいつも、布団に入るとすぐに目を閉じてしまう。"},
  "000473": {"voice": "童話。三人称。「〜ました」調。", "synopsis": "明け方、霧に濡れた羊歯の葉が冷たく揺れている。よだかは高く鳴き、巣の中をきちんと片づけ、体じゅうの羽をきれいに整えてから巣を飛び出す。霧が晴れて太陽が東から昇ると、よだかはまぶしさをこらえ、まっすぐ太陽の方へ飛んでいく。"},
  "000470": {"voice": "童話。三人称。「〜ました」調。", "synopsis": "楽団の練習で楽長にひどく叱られたあとの休憩。ほかの楽員たちはお辞儀をして、煙草を吸ったりどこかへ出ていったりする。ゴーシュは粗末なセロを抱えて壁の方を向き、口をゆがめて涙をこぼすが、気を取り直して、さっき合奏した所を一人で最初から静かに弾き直し始める。"},
  "056041": {"voice": "明治の雅俗折衷の文語体。三人称。一つの文が長く、読点でつないでいく。", "synopsis": "雨の日、少年信如は母に言いつけられて姉の家へ届け物に行く。いつもの細道をたどるうち、運悪く、気にかけている少女美登利の住む大黒屋の寮の前まで来たところで、突風が傘をあおり、宙へさらわれそうになる。踏ん張った拍子に、下駄の前鼻緒がずるずると抜けてしまい、傘よりもこちらのほうが大ごとになる。"},
  "000624": {"voice": "三人称。漢文訓読調の硬い文体。", "synopsis": "袁傪の一行は、虎になった旧友李徴に言われたとおり、丘の上に着いてから振り返り、さきほどの林の中の草地を眺める。すると一匹の虎が草むらから道へ躍り出て、光の薄れた明け方の月を仰いで二、三度吼えたかと思うと、また草むらに戻り、二度とその姿を見せなかった。"},
  "000621": {"voice": "三人称。漢文調の語り。", "synopsis": "弓の名人を目指した紀昌が、山奥の老師のもとで九年修行して山を降りてくる。人々は彼の顔つきが変わったのに驚く。以前の負けず嫌いで鋭い面構えは消え、表情のない、木の人形か愚か者のような顔になっている。旧師の飛衛を訪ねると、飛衛はその顔を一目見て感嘆し、これこそ天下の名人だ、自分などは足元にも及ばない、と叫ぶ。"},
  "000424": {"voice": "一人称「私」。", "synopsis": "果物屋で買った一個の檸檬。私は何度もそれを鼻に近づけて嗅ぐ。産地のカリフォルニアが思い浮かび、漢文の授業で習った、香りが鼻を打つという言い回しが切れ切れに浮かぶ。匂いのよい空気を胸いっぱいに吸い込むと、ふだん深く息をしたことのない体と顔に温かい血がのぼり、体の中に元気が目覚めてくる。"},
  "000429": {"voice": "三人称（青年峻の視点）。", "synopsis": "夏、城跡のある地方の町。向こうで女の子たちが米つきばったを捕まえ、後ろ脚をつまんで、わらべ歌を歌いながら米をつかせている。この土地では神主のことを「ねぎさん」と呼び、歌はそれをばったに呼びかけるものだ。峻は、細長い顔に短い触角のあるばったがいかにも神主らしく見えること、脚を持たれて身動きできないまま体を上下させる姿ののんきさを思い浮かべる。"},
  "042618": {"voice": "三人称。民話風の「〜ました」調。", "synopsis": "山賊だった男は、女に連れられて都で暮らしているが、何よりも退屈に苦しむ。人間というものはうるさく退屈だと思う。大きな犬が歩くと小さな犬が吠えかかるように、自分は吠えられる側だと感じる。ひがみや嫉妬や考えごとが嫌いな男は、山の獣や木や川や鳥はうるさくなかった、と思い返す。"},
  "042615": {"voice": "一人称「私」。随筆風の回想。", "synopsis": "二十歳で代用教員をしていた頃の私。満ち足りていて、何に苦しめばいいのかわからなかった。肉体の欲望も少ない。苦しむとは何かを考え、貧乏や病気や失恋などさまざまな不幸を空想してみるが、自分は満ち足りていて、不幸の影さえつかめない。叱られるのを恐れる悪童の切なさが、かえって懐かしい現実に感じられる。不幸とは何なのか、と問う。"},
  "001293": {"voice": "三人称。江戸の捕物帳。", "synopsis": "初夏の江戸の町。火の見櫓の上に鳶がじっと止まり、遠乗りに出た若侍の陣笠にも夏めいた日差しが光っている。岡っ引の半七と連れの二人が、旗本小幡家の菩提寺である浄円寺を訪ねる。かなり大きな寺で、門を入ると山吹が一面に咲いている。二人は住職に会う。"},
  "056160": {"voice": "三人称。江戸の町の怪談。", "synopsis": "影を踏まれることを怖がっている娘おせきが、許嫁の要次郎と夜道を歩いている。要次郎が何か言った途端、路地から犬が二匹飛び出してきて、ちょうどおせきの影の上で暴れまわる。おせきが身をよけると、犬はそれを追うようにして、また影を踏みながら走り回る。おせきは震えて要次郎にすがりつく。"},
  "002381": {"voice": "一人称。少年が瓶に詰めて流す手紙。「〜ます」調。", "synopsis": "無人島に兄妹二人で流れ着いて年月がたち、罪の意識に苦しむ兄が崖の上で神に祈り、お示しを待つ。しかし神は何も示さない。青い空には白い雲が細く流れているだけで、崖の下では渦巻く波の間に、鮫のひれや尾が時々見えるばかりである。"},
  "000930": {"voice": "一人称。娘が書く手紙。「〜で御座います」調。", "synopsis": "子どもの頃の記憶。父が母の不貞を疑い、覚えがないと言う母に、証拠があると怒鳴りつける。母は父の顔をじっと見ながら、前掛けの上に両手をきちんと重ね、無理に気を落ち着けようとしている。その痛々しい姿を、私は死んでも忘れないだろう。ただ、母の声はいつもと違って震えてかすれていた。"},
  "045245": {"voice": "三人称（同心庄兵衛の思索）。", "synopsis": "島流しになる喜助が、わずかな金を持たされただけで満ち足りているのに対し、自分は暮らしに満足できない。庄兵衛は、この大きな違いはどこから来るのかと考える。喜助には養う家族がなく、自分にはあるからだ、と片づけるのは簡単だが、それはうそだ。自分が独り身だったとしても、喜助のような心持ちにはなれそうにない。根はもっと深いところにある、と庄兵衛は思う。"},
  "000689": {"voice": "三人称。", "synopsis": "山椒大夫のもとで奴として働かされることになった姉弟。弟の厨子王は山で柴を刈る仕事を、慣れないながら気を取り直して、昼までに一荷、午後にもう一荷刈る。浜へ行った姉の安寿は、川岸を北へ歩き、潮を汲む場所に降りたが、汲み方がわからない。自分を励まして柄杓をおろした途端、波に柄杓をさらわれる。"},
  "000521": {"voice": "旅の僧が語る一人称の回想。くだけた話し言葉。", "synopsis": "山道の薄暗い林で、頭上の木の枝から山蛭が降ってくる。首筋がむずむずするので手で撫でると、蛭の背がぬるりと手に触れる。胸の下や帯の間にも、肩の上にも吸いついている。僧は飛び上がって全身を震わせ、枝の下を一目散に駆け抜けながら、気づいたものだけは夢中でむしり取る。"},
  "000360": {"voice": "明治の文語体。一人称「予」の回想。", "synopsis": "九年前の春、小石川の植物園。医学生の高峰と予が池のほとりを歩いて躑躅の丘へ向かおうとしていると、向こうから一団の見物客がやってくる。洋服に山高帽、ひげの男が先に立ち、三人の婦人を囲んで、後ろにも同じような男がつく。男たちは貴族の御者で、婦人たちは日傘をさし、衣ずれの音をさせながら静かに歩いてくる。すれ違いざま、高峰は思わず振り返る。"},
  "000211": {"voice": "一人称「僕」。少年時代の回想。「〜ました」調。", "synopsis": "友達の絵具を盗んで先生の部屋に連れて行かれた僕。泣いているうちに眠ってしまい、肩を軽く揺すられて目を覚ます。やせて背の高い先生が笑顔で見おろしている。眠って気分が軽くなり、少し照れて笑い返しながら、膝から落ちそうになっていた、先生のくれた葡萄の房をつまみ上げるが、すぐに悲しいことを思い出して笑いが引っ込む。"},
  "004803": {"voice": "一人称「私」。", "synopsis": "婚約者を亡くした翌年の冬、山の村の小屋で一人で暮らしている私。夕方、食事の用意ができると、手伝いの村の娘を帰らせ、暖炉のそばに大きな机を寄せて、書きものも食事もそこで済ませることにする。ふと見上げると壁の暦がまだ九月のままなので、立って破り取り、今日の日付に印をつけてから、一年ぶりに手帳を開く。"},
  "051034": {"voice": "童話。三人称。「〜ました」調。", "synopsis": "国境の石碑を守る二人の兵士、大きな国の老人と小さな国の青年。青年ははじめ将棋の指し方を知らなかったが、老人に教わり、このごろは穏やかな昼に毎日向かい合って指している。はじめは老人がずっと強く、駒を落として指していたが、やがて対等に指して、老人が負けることもある。"},
  "054372": {"voice": "童話。三人称。", "synopsis": "人魚の娘を南の国へ売ってしまった老夫婦。その晩、沖は大嵐になる。娘を乗せたあの船はとても助かるまいと、二人は震えながら話す。夜が明けても沖は真っ暗で凄まじい様子で、その夜に難破した船は数えきれないほどだった。"},
  "000637": {"voice": "童話。三人称。「〜ました」調。", "synopsis": "片手を人間の手に変えてもらった子狐が、一人で町へ手袋を買いに行く。雪明かりの野原を、町の灯を目当てによちよち進む。はじめ一つだった灯が二つ三つと増え、やがて十にもなる。子狐は、灯にも星のように赤や黄や青があるのだと思う。町に入ると家々はもう戸を閉め、高い窓から暖かそうな光が道の雪に落ちているだけだった。"},
  "000628": {"voice": "童話。三人称。", "synopsis": "昼過ぎ、子狐のごんは村の墓地へ行き、六地蔵の陰に隠れている。よい天気で、遠くに城の屋根瓦が光っている。墓地には彼岸花が赤く咲き続いている。村の方から鐘の音が聞こえてくる。葬式が出る合図である。"},
  "056645": {"voice": "一人称「私」。", "synopsis": "北陸を走る汽車の二等車。親不知の断崖を過ぎるころ、夕闇が迫って、車内の電灯と外の明るさが同じに感じられるほどになる。そのとき、向こうの隅にいたたった一人の同乗者が急に立ち上がり、座席に黒い繻子の風呂敷を広げ、窓に立てかけてあった平たい額のような荷物を包み始める。それが私には妙に感じられた。"},
  "056648": {"voice": "三人称（女流作家・佳子の視点）。", "synopsis": "女流作家の佳子のもとに届いた分厚い原稿の束。綴じた原稿用紙だったが、題も署名もなく、いきなり「奥様」という呼びかけで始まっている。手紙なのかしらと思いながら二、三行読み進めるうちに、彼女は何か異常で気味の悪いものを予感する。それでも生まれつきの好奇心にひかれて、先を読んでいく。"},
  "045649": {"voice": "日記体。一人称「私」。", "synopsis": "住み込みの職を二週間で追い出された私は、大きな風呂敷包みを提げてぶらぶら歩く。部屋代も払ったのに、と何もかも投げ出したい気持ちになる。青い瓦屋根の洒落た貸家があり、広い庭に面したガラス窓が二月の風の中できらきら光っている。少し休んでいこうか、と思う。"},
  "000545": {"voice": "三人称。大阪の町の語り。読点でつないだ長い文。", "synopsis": "蝶子は家を出た柳吉の帰りを待ち続けて十日目。路地の地蔵盆の盆踊りに無理に引っ張り出されて三味線を弾いていると、絵行灯の下をひょこひょこ歩いて来る柳吉の顔が見える。明かりに照らされてまぶしそうにしている。その瞬間に三味線の糸が切れる。蝶子はすぐ彼を二階へ連れて上がり、話をするより先に身を投げかける。"},
  "000452": {"voice": "三人称。冒頭の情景描写。", "synopsis": "晩秋、朝から曇っているが雨にはならない競馬場。低い雲が垂れこめ、冷たい秋風が吹く。午後になると急に暗くなり、人も馬も沈みこみそうな重苦しさだが、こういう日はレースが荒れて大穴が出るせいか、妙に落ち着かない慌ただしさがあり、夕暮れのような陰りの中を苛立った殺気が行き交っている。"},
  "000329": {"voice": "随筆。一人称「自分」。", "synopsis": "友人と二人、夏の日に茶店を出て、小金井の堤を上流へ向かって歩き出す。その日の散歩がどれほど楽しかったか。小金井は桜の名所なので、夏の盛りに堤を歩くのは傍目には愚かに見えるだろうが、それは今の武蔵野の夏の日の光を知らない人の言うことだ。"},
  "001409": {"voice": "三人称。", "synopsis": "多摩川沿いの田舎宿、雨の夜。日が暮れてから着いた洋服の男は大津という。痩せ型で色白、すらりとしていて、同宿の秋山とは対照的だ。秋山は二十五、六で丸く太って赤ら顔、目元に愛嬌があり、いつもにこにこしている。大津は無名の文学者、秋山は無名の画家で、偶然、同じような青年が田舎宿で出会ったのだった。"},
  "001503": {"voice": "一人称「私」。写生文。", "synopsis": "信州小諸。どんよりと霧がかかって灰色に見える日、私は台所の焚き火に冷えた両手をかざしたくなる。足袋の爪先まで冷え、恐ろしい冬が近づいてくるのを感じる。この山の上では十一月から三月まで、ほぼ五か月の冬を越さねばならず、その長い冬ごもりの支度をしなければならない。"},
  "000827": {"voice": "随筆。一人称「余」。", "synopsis": "病み上がりで身重の妻を連れて、冬の植物園に来ている。園の静けさは前と変わらず、日の光の見えない力が地上のすべての動きをそっと押さえつけているようだ。気分はすっかりよいと言うので、そろそろ帰ろうかと言うと、妻は少し驚いた顔で余を見つめ、せっかく来たのだからもう少し池の方へ行ってみましょうと言う。それもそうだと、そちらへ向かう。"},
  "002363": {"voice": "子ども向けの科学随筆。「〜です・ます」調。", "synopsis": "熱い茶碗の湯の表面を日光に透かして見ると、虹色のついた霧のような薄い膜がかぶさっていて、それがひび割れのように縦横に破れ、破れた所だけが透明に見える。この不思議な模様が何なのかは、筆者が調べた限りまだよくわかっていないらしい。ただ、前に話した湯の温度のむらと何か関係があることは確かだろう。"},
  "002302": {"voice": "三人称。", "synopsis": "真夏の宿場はがらんとしている。目の大きな一匹の蠅だけが、薄暗い厩の隅の蜘蛛の巣にかかり、後ろ脚で網を跳ねながらしばらくぶら下がって揺れている。やがてぽとりと落ち、馬糞の重みで斜めに立った藁の先から、裸にされた馬の背中まで這い上がる。"},
  "000904": {"voice": "三人称「彼」。", "synopsis": "肺病の妻を看病している彼が、医者から、もう左の肺はなく、右もかなり進んでいると告げられる。彼は海沿いの道を車に揺られて帰る。晴れた明るい海が、死を隠している単調な幕のように彼の前に垂れている。彼は、もういつまでも妻に会いたくないと思う。会わなければ、妻がずっと生きているのを感じていられるからだ。"},
  "000496": {"voice": "三人称。", "synopsis": "かつて人を殺めた市九郎は出家し、岩山に洞門を掘っている。ひたすら槌を振る。槌を振っている間は何の雑念もない。人を殺した悔恨も、極楽に生まれたいという願いもなく、晴れやかな精進の心だけがある。出家して以来、夜ごとに彼を苦しめてきた悪業の記憶が日ごとに薄れていくのを感じ、彼はいっそう勇んで槌を振る。"},
  "004306": {"voice": "三人称。戦国の武者物語。", "synopsis": "猩々緋の陣羽織と唐冠の兜で敵に恐れられた槍の名手、中村新兵衛。その日は主君の若い息子にその装束を貸し、自分は黒皮縅の鎧に南蛮鉄の兜という地味な姿で、若武者の華々しい戦いぶりを満足げに眺めている。自分の形だけでもこれほどの力があることに、大きな誇りを感じている。"},
  "052016": {"voice": "一人称「わたくし」。", "synopsis": "夏の夕暮れ、玉の井の路地。表通りのネオンが映る空の端では、さっきから時々稲妻が光っていたが、この時急に鋭い光が目を射る。しかし雷鳴らしいものは聞こえず、風がぱたりと止んで、日暮れの暑さがまたぶり返してくる。"},
  "056642": {"voice": "随筆。", "synopsis": "日本では寺院だけでなく、宮殿でも庶民の家でも、外から見て一番目立つのは瓦や茅の大きな屋根と、その庇の下に漂う濃い闇である。昼間でも軒下には洞窟のような闇がめぐり、戸口も扉も壁も柱もほとんど見えないことさえある。"},
  "056641": {"voice": "三人称。江戸の物語。", "synopsis": "若い刺青師の清吉が、眠らせた娘の背中に刺青を彫り始める。左手の指の間に挟んだ絵筆の穂先を娘の背に寝かせ、その上から右手で針を刺していく。彼の魂は墨の中に溶けて肌にしみこみ、焼酎に混ぜて刺す朱の一滴一滴が彼の命のしたたりである。彼はそこに自分の魂の色を見る。"},
  "000647": {"voice": "一人称「僕」の回想。", "synopsis": "僕と民子の仲に、姉だけでなく母までが反対し、民子は母に叱られて一晩中泣き通したと聞かされた僕。そうだったのか、と思うと、か弱い望みも絶えたも同然で、民子は泣くしかなかったのだろうと考え、また熱い涙がとめどなく溢れる。しばらくその場にぼんやりし、その日は朝飯も食べずに、昼過ぎまで畑のあたりをうろつく。"},
  "004680": {"voice": "一人称「私」。原爆が落ちた直後の広島。", "synopsis": "崩れた家から逃げる支度をしている。まだ準備が整っていない。私は押入れから寝間着を出して、そばにいた者に渡し、縁側の暗幕を引き裂き、座布団も拾う。縁側の畳をはね上げると、持ち出し用の雑嚢が出てきたので、ほっとして肩にかける。隣の製薬会社の倉庫から赤い小さな炎が見え始め、いよいよ逃げる時だ。最後に、ぽっきり折れた楓の脇を踏み越えて出ていく。"},
  "001016": {"voice": "三人称。回想。", "synopsis": "食の細い子どものために、母が目の前で鮨を握ってやる。母は、ほら鮨だよ、手でじかにつかんで食べていいのだよ、と言う。子どもはそのとおりにする。ほどよい酸味と、飯と卵の甘みが混ざった味が舌いっぱいに広がり、一つ食べ終えると、おいしさと親しさが体の中に温かく湧いて、母に体を寄せたくなる。"},
  "001465": {"voice": "三人称。", "synopsis": "蟹工船は小型の漁船である川崎船を八隻積んでいる。荒天の中、船員や漁夫は、白い歯をむいて襲いかかる波に川崎船をもぎ取られないよう縛りつけるため、自分たちの命を安々と賭けなければならない。監督は、お前たちの一人や二人が何だ、川崎船を一艘取られたらたまらないのだ、とはっきり言い放つ。"}
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