桃色の天蓋を見上げて
2024-02-18 13:11
河津川沿いの遊歩道に足を踏み入れると、頭上はもう一面の桃色でした。河津桜は1955年頃に河津町田中で偶然発見された早咲き桜で、オオシマザクラとカンヒザクラの自然交雑種とされます。ソメイヨシノより色濃く、花びらは厚め。曇り空を背に枝を広げる花のドームを見上げ、私はしばらく動けずにいました。下から仰ぐと、空までほのかに紅色に染まって見えるのです。
二月半ば、まだ冬の名残を残す伊豆半島の南東、河津町を訪ねました。日本一早く咲くと名高い河津桜は、ソメイヨシノよりも濃い紅色をまとい、約一か月にわたって咲き続けます。本州がまだ薄手のコートを手放せない頃、ここではもう春の盛り。川沿いの遊歩道を歩きながら、桃色の天蓋の下に身を置いてきました。
2024-02-18 13:11
河津川沿いの遊歩道に足を踏み入れると、頭上はもう一面の桃色でした。河津桜は1955年頃に河津町田中で偶然発見された早咲き桜で、オオシマザクラとカンヒザクラの自然交雑種とされます。ソメイヨシノより色濃く、花びらは厚め。曇り空を背に枝を広げる花のドームを見上げ、私はしばらく動けずにいました。下から仰ぐと、空までほのかに紅色に染まって見えるのです。
2024-02-18 13:30
河津川沿いには約8,000本の河津桜が約4kmにわたって植えられ、毎年二月から三月にかけて「河津桜まつり」が開かれます。少し開けた場所まで歩くと、葦の茂る水辺に沿って桜が長く尾を引くように連なっていました。雲間から射す光が花の塊をぽつりと照らす。観光客のざわめきも、ここでは風景の一部に溶けて、伊豆の早春そのものの音になっています。
2024-02-18 13:33
並木の華やぎから一本外れると、急に景色は冬の色に戻りました。葉を落とした雑木のあいだを細い土の道が抜け、木に括られた手書きの案内板が静かに方向を示しています。河津町は伊豆半島の南東に位置する温暖な町で、桜のほかに七滝(ななだる)や峰温泉など見どころも多い土地。賑わいから半歩離れたこの小径もまた、伊豆らしい素朴さの肖像でした。
桜並木を抜けて少し歩けば、ひと息に静けさが戻ってきます。観光客の歓声と里山の沈黙が、同じ午後のなかに同居している。早春の伊豆は、賑わいと余白を一緒に手渡してくれる旅先でした。