マドリード、グラン・ビアとマヨール広場
2019-08-31 08:12 – 08:33
朝のマドリード。勝利の女神を頂くメトロポリスのファサードが、いきなり金色に染まって私を迎えました。少し歩けば、マヨール広場のフレスコ壁画が静かに開けています。一人の足音だけが石畳に響く、はじまりの30分でした。
セゴビアの水道橋に始まり、トレドの城壁、コルドバの赤白アーチ、グラナダのアルハンブラ、セビリアの巨大な大聖堂、そしてバルセロナのガウディへ。ローマ・イスラム・キリスト教が幾重にも上書きされた半島を、私は石の層を読むように歩きました。
2019-08-31 08:12 – 08:33
朝のマドリード。勝利の女神を頂くメトロポリスのファサードが、いきなり金色に染まって私を迎えました。少し歩けば、マヨール広場のフレスコ壁画が静かに開けています。一人の足音だけが石畳に響く、はじまりの30分でした。
2019-08-31 10:30 – 11:15
マドリード王宮の天井で、ティエポロの『スペイン王国の栄光』が雲を抜けていきます。広間を抜けて表に出ると、白亜のアルムデナ大聖堂がぽっかりと夏の青に浮かんでいました。観光客の声を吸い込む厚い壁の前で、しばらく動けなくなる時間。
2019-08-31 16:04 – 17:29
午後はソフィア王妃芸術センターへ。ガラスのエレベーターで現代美術の階を巡り、汗ばんだ体をレティーロ公園のボート池で冷ましました。漕ぎ手の声が水面を渡り、アルフォンソ12世の柱廊までゆっくり届きます。
2019-08-31 20:17
マヨール広場脇のサン・ミゲル市場。鉄骨と硝子の屋根の下、生ハムとシェリーと魚介の匂いが混ざりあいます。一人席に肘をついてタパスを並べると、旅の最初の夜が静かに始まりました。
2019-09-01 08:59 – 11:17
朝一番のバスでトレドへ。展望からはタホ川がゆるく旧市街を抱いていました。坂を下って大聖堂へ回ると、獅子の門の彫像群が頭上から私を見下ろしてきます。三つの宗教が暮らした石畳の街は、どの曲がり角にも歴史の影がありました。
2019-09-01 13:51 – 14:08
マドリードに戻り、午後はセゴビアへ。アソゲホ広場でいきなり立ちはだかる二段アーチ。モルタルなしで二千年立ち続ける石組みに、思わず手をかざしてしまう。屋根越しに広がる街は、赤茶のモザイクのようでした。
2019-09-01 15:19 – 15:55
大聖堂内では、金細工のバロック・オルガンが薄暗がりに浮かんでいます。さらに丘の先端まで歩けば、舳先のように突き出した白いアルカサル。ディズニーが憧れたという伝説が、ここに立つとよく分かりました。
2019-09-01 18:52 – 19:28
夕方のマドリードはラス・ベンタス闘牛場へ。空のアレナが満員に染まり、銀刺繍の闘牛士が一人、砂の中央に立ちます。喝采と沈黙の波が交互に押し寄せ、私はただ息を呑んでいました。
2019-09-02 11:08 – 12:41
夜行バスで南下してコルドバへ。椰子と鳩の公園で時差を整え、メスキータの西壁に回ります。蹄鉄アーチと赤白の楔石、ムデハルの繊細な漆喰彫刻。一人で見上げるには贅沢すぎる午前の光でした。
2019-09-03 08:47 – 10:47
グラナダではアルハンブラに半日。サン・ニコラス展望から望むアルバイシンの白壁、ヘネラリフェの糸杉庭園、城塞アルカサバの石積み。風はもう少しだけ乾いて、夏の終わりが近いと知らせてきました。
2019-09-04 07:56 – 10:12
バルセロナ初日。早朝のグエル公園は柱廊が空いていて、傾いだ列柱の影だけが石畳に長く伸びていました。坂を下りると煉瓦のモデルニスモ住宅街、まだ眠るバルセロナの背中を踏むようでした。
2019-09-04 13:32 – 17:19
列車を乗り継ぎモンセラートへ。岩塊の麓で僧院を見上げ、テレフェリックで山頂駅まで一気に上がります。見下ろせば谷を縫うロープウェイのワイヤーと、丸みを帯びた奇岩の連なりだけ。修道院の合唱を聴いて、旅の真ん中に静けさが置かれました。
2019-09-04 20:02 – 20:04
バルセロナの夜はカタルーニャ音楽堂。逆さに咲く太陽のステンドグラス天蓋、ペガサスとミューズの彫刻、玄関ホールの植物文様の硝子。モンタネールの世界に包まれて、足を止める時間が長くなっていきました。
2019-09-05 08:47 – 09:37
クレーンに見守られながら、生誕のファサードの森のような彫刻を眺めました。エレベーターで鐘塔まで上がれば、アシャンプラの碁盤目が地平まで広がっています。建設はまだ続く、私の旅もまだ続く。
2019-09-05 14:45 – 16:44
午後はグラシア通りへ。カサ・バトリョの屋上で、トレンカディスの破片が陽を弾いて虹を作ります。少し歩けば鋳鉄のバルコニーが咲くカサ・テラデス。歩道そのものが美術館の渡り廊下に変わっていきました。
2019-09-06 08:40 – 09:40
旅の最終日。ライエタナ通りの先にゴシックの尖塔がぼんやり浮かびます。サンタ・エウラリア聖堂のクリプトに降りると、赤い絨毯と石棺の静けさだけ。一人で来た旅が、ここで一度静かに区切られました。
マドリードからバルセロナへ、私は8日でひとつの国を縦に歩きました。石と光と歴史が同じ空の下で語りかけてくる、密度の濃い旅でした。