みちのく夏紀行 みずうみと祭の灯

東北 6 章 / 17 枚

東北の夏を、ひとり北へ辿りました。津軽の城下から世界遺産の青池へ、日本海の千畳敷で潮風を浴び、平泉の浄土庭園で時を緩め、八甲田の稜線から夏雲を見渡す。最後は青森ねぶたの極彩色に迎えられて、みちのくの広さと深さを身体で覚えた六日間です。

弘前城下、雨上がりの庭園

2024-08-13 12:23 – 12:36

津軽十万石、弘前藩津軽家の居城・弘前城跡を歩きました。1611年に二代藩主信枚が築いた東北唯一の現存天守(三重)を擁する城で、外濠の内側には池泉と藤田記念庭園が続きます。雨上がりの石段に苔が光り、霧にけぶる遊園地の噴水池を木々の間から見下ろす。瓦屋根の長い棟が森の中に低く伸び、夏のしっとりした静けさが、城下町の懐の深さを教えてくれました。

青池、世界遺産の水鏡

2024-08-14 09:59 – 10:58

白神山地の麓、十二湖の奥にある青池を訪ねました。1993年に屋久島と共に日本初のユネスコ世界自然遺産に登録されたブナ原生林の懐で、湖底まで澄んだ水がインクを溶かしたような深い青に染まります。原因はいまだ完全には解明されていない、と案内板。木道を踏みしめ、ブナと羊歯のトンネルを抜けると、森の奥に小さな鏡が静かに光っていました。

千畳敷海岸、日本海の岩棚

2024-08-14 13:59 – 14:05

深浦町の千畳敷海岸へ。1792年(寛政四年)の地震で隆起したとされる広大な岩棚で、津軽藩主が千畳の畳を敷いて宴を催したという伝承が地名の由来です。鈍色の空に黒い奇岩が屹立し、日本海の波が白く砕ける。撮影碑の前に立つと、海風は塩気をたっぷり含んでいて、北のリアスの荒々しさが、夏の体に沁みてきました。

平泉、浄土庭園に蓮ひらく

2024-08-14 16:43 – 17:00

藤原氏二代基衡が12世紀に造営した平泉・毛越寺の大泉が池を巡りました。中尊寺金色堂と並ぶ世界遺産「平泉」の中核で、池に石組と中島を配し極楽浄土を地上に写した日本屈指の浄土庭園です。八月の池面を覆う蓮の葉、雲の切れ間に差す夕光、苑路の先に架かる朱い太鼓橋。旅の中日、千年前の祈りの形が、ここに静かに残っていました。

八甲田、夏の稜線を歩く

2024-08-15 11:01 – 11:24

青森市南、十和田八幡平国立公園の八甲田山系に登りました。最高峰大岳1,585m、十数の峰からなる火山群で、明治三十五年の雪中行軍遭難でも知られます。ロープウェイ代わりのリフトで笹原をゆっくりと上り、稜線を辿ると、火口壁の岩肌と緑のコントラストが眼下に広がる。風はもう秋の匂いをわずかに含み、夏の終わりが近いと知らせてきました。

青森ねぶた、極彩色の灯籠

2024-08-15 15:22 – 15:22

旅の終わりに、青森駅前で保管されていた大型ねぶたに出会いました。青森ねぶた祭は毎年8月2〜7日に行われる東北三大祭のひとつで、1980年に国の重要無形民俗文化財に指定されています。竹と針金で武者を組み、和紙を貼り絵具で彩る山車は高さ5メートル超。閉幕直後の倉に静かに鎮座する武者絵は、祭の余熱をまだ放っていました。

湖面の青、稜線の風、極彩の灯。土地ごとに季節の濃さが違い、東北はひとつの国のようでした。次は冬、雪に沈むこの道を歩きにこようと思います。