秋灯と花壇 植物園のひととき

動物園 4 章 / 4 枚
I月初旬の午後、私は都内の植物園へ向かいました。動物園・水族館をめぐるつもりが、結局この日いちばん長く立ち止まったのは、秋色に染まる花壇と、夕暮れに灯りはじめた竹のあかりでした。屋内の装花展から、日没間際の園路までを、ゆるい動線でたどります。

藤色の壁と秋の装花

2025-11-03 15:19

薄紫の壁を背に、白樺の幹とすすきめいた穂、たわわな赤い実が組まれています。実の付き方からしてナナカマドかピラカンサのよう。日本の植物園や園芸博物館では、立冬前後にこうした「秋の装花展」が催されることが多く、生花と枯れ枝を一つの構図に収める技は華道の盛物に通じます。私はしばらく、紫の余白と紅の点描の対比に見とれていました。

夕日に燃える秋花壇

2025-11-03 16:09

屋外に出ると、マリーゴールドの黄、サルビアの青紫、ジニアの橙が一面に広がっていました。マリーゴールドは中南米原産のキク科で、日本では明治期に観賞用として定着したと聞きます。低く差し込む西日が花々を裏側から照らし、色が二倍に濃く見えるのは夕方の花壇ならではの恵み。私は園路の縁で、しばらく色の渦に呑まれていました。

木々に下がる竹あかりの球

2025-11-03 16:20

日が傾きはじめると、樹々のあいだに大ぶりの竹細工の球体が下がっているのに気づきました。表面の小さな穴から漏れる光は、もとは大分・竹田発祥とされる「竹楽(ちくらく)」に着想を得た現代の竹あかり。点灯前のこの時間でも、紅葉と竹の編み目が陰影で語り合っています。私はカメラを下から構え、夕空との重なりを一枚ずつ確かめました。

石畳の参道、灯のはじまり

2025-11-03 16:21

石畳の小道の両側に、円筒形の竹灯籠がずらりと並んでいました。突き当たりは数段の石階段、その先に常緑樹の闇。日中の植物園と、夜の灯火イベントが地続きになる短い時間帯です。竹は数年で再生する素材で、間伐材の活用と地域工芸を結ぶ取り組みとして全国の庭園で広まりました。私は最後の自然光の中、ひとつ深呼吸して階段へ向かいました。

動物の気配こそ薄い一日でしたが、季節の植物と人の手仕事の灯が、思いがけず濃い余韻を残しました。次は閉園まぎわでなく、開園すぐの澄んだ光のなかで歩いてみたい、と帰り道に思いました。