未解決問題への挑戦

答えの出ていなかった数を、計算機で決める

「17〜24のどこか」とまでしか分かっていなかった数や、研究者の表で空欄のままだった値を、SAT ソルバーで決めています。答えには必ず、だれでも確かめ直せる証拠を付けます。下の結果は論文とデータを Zenodo で公開していますが、まだ査読を受けていません。

決めた値

2026年10月25日 公開

扇のラムゼー数 R(F₄, F₄) = 18

18人の全員どうしを、赤か青の線で結びます。どう塗っても、同じ色の「扇」(1人を中心に、三角形が4つつながった形)が必ずできます。17人だと、扇を1つも作らない塗り方があります。だから答えは 18 です。

これまで 17〜24→18人
1517 1824 26 これまでの範囲(研究者の一覧では上限28とだけ)

17人の側は、扇のない塗り方を1つ見せれば済みます。18人の側は、塗り方が 2153 通りあって全部は試せません。そこで「1人から出る同じ色の線は11本まで」と分かることなどを使って3つの場合に分け、SAT ソルバーに「そんな塗り方はない」と示させました。その証明ファイル(合わせて1.27GB)を、正しさが数学的に保証された検査器 cake_lpr で1行ずつ確かめています。

あわせて、2026年10月に Jiang・Shao が発表した R(F₃, F₄) = 17 も、別の方法で確かめました。

査読前証明は cake_lpr で検査済みラムゼー数の一覧(Radziszowski)への掲載はこれから

2026年10月28日 公開

4色のラドー数 R₄(4(x−y)=3z) = 313、R₄(5(x−y)=2z) = 625

1から n までの整数を4色で塗ります。n が 313 なら、どう塗っても、同じ色の x, y, z で 4(x−y) = 3z になる組が必ずできます。312 までなら避けられます。この「必ずできる最小の n」がラドー数です。

研究者の表で 空欄→313625= 5⁴

2022年に Chang・De Loera・Wesley がまとめた4色の値の表(論文の表10)で、空欄だった2つです。625 は 5 の4乗とちょうど同じで、「a ≥ b+2 なら答えは a⁴」という3色で知られた形が4色でも成り立つかもしれない、という手がかりになります。

確かめ方は扇と同じです。下の側は実際の塗り方を別のプログラムで検査し、上の側は証明ファイルを cake_lpr で検査しました(大きい場合は問題を数千の小部分に分け、分け方に漏れがないことも検査)。手順に頼る部分を減らすため、313 と 625 は「色の入れ替えで同じになる塗り方を省く」工夫を外した式でも確かめています。

査読前19件の証明を cake_lpr で検査済み表の作者への連絡はこれから

先に出した人がいて、別の方法で確かめた値

値先に出した人こちらでしたこと
R(F₃, F₄) = 17Jiang・Shao(arXiv:2610.26109、2026年10月19日)扇の計算と同じ道具で、場合分けをしない式と、細かく分けて解く方法の2通りで確かめた
R₄(2(x−y)=3z) = 226Ichikawa(Zenodo、2026年10月22〜23日)7月に計算を終えていたが、公開は先方が先。先方が弱点に挙げていた2点(工夫を外した式での確認、検証済みの検査器)を埋める形で確かめた

226 は、計算が終わってから3か月寝かせているあいだに先を越されました。この経験から、扇の R(F₄, F₄) は計算を終えた翌日に公開しました。

届かなかった挑戦

Erdős–Gyárfás 予想の反例さがし(2026年8月、打ち切り)

「どの頂点からも3本以上の線が出ているグラフには、長さが 4, 8, 16, … (2の累乗)のどれかの輪が必ずある」という予想です。反例が1つ見つかれば決着します。

各頂点からちょうど3本ずつ線が出るグラフに絞って探し、SAT ソルバーでは 32頂点まで反例はないという答えになりました。ただし、証明ファイルを出して別の検査器で確かめてはいないので、「確定」とは書きません。焼きなまし法でも、長さ16の輪だけがどうしても消えませんでした。反例が出なければやめると決めていたので、ここで打ち切りました。

反例は見つからなかった32頂点までの結果は証明ファイル未検査

確かめ方 どの結果も同じ形にしています

1. 下の側は「実例」で示す「17人なら避けられる」は、扇のない塗り方を1つ見せれば終わり。実例は別に書いたプログラムで検査し、わざと1か所変えると検査器が見つけることも確かめる。
2. 上の側は SAT ソルバーに「ない」と言わせる「どう塗っても必ずできる」は、すべての塗り方を論理式にして、解がないことを示させる。対称な塗り方を省く工夫で、何年もかかる計算を分〜時間に縮める。
3. 「ない」の証明を検査器で確かめるソルバーに証明の手順をすべてファイルに書き出させ、正しさが数学的に保証された検査器 cake_lpr で1行ずつ確かめる。ソルバー自身を信じなくてよくなる。
4. 式そのものを別の方法で読み直す論理式が問題を正しく表しているかは、別のプログラムで読み直して確かめる。知られている小さい値を同じ方法で出せるかも試す。

次の候補 まだ始めていません

問題いま分かっている範囲決まったら載る場所
本のラムゼー数 R(B₄, B₇)22〜23(差は1)ラムゼー数の一覧(Radziszowski の Dynamic Survey)
扇のラムゼー数 R(F₃, F₅)21〜26同上。扇の計算の道具がそのまま使える
Tao らの「最適化定数」の一覧90番まで(約120項目)の定数の上下の限界Davis・Ivanisvili・Tao が管理。改善すると、更新の欄に改善した人の名前つきで載る

AI との分担

探索のコード、計算の実行、論文の下書きは、AI エージェント(Claude Code)と一緒に作りました。論文の謝辞にもそう書いています。AI が出した答えをそのまま信じないために、上の「確かめ方」の4段を、どの結果にも必ず通しています。