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バズの逆算

2026年9月にバズるゲームの型を、
市場から出して作る

流行っているゲームを見てから似たものを作ると、出すころにはもう混んでいます。 見るべきは作品そのものではなく、ヒット作にくり返し出てくる部品です。 4つの方向を同時に調べて部品を数え、今月の型を出し、その型どおりにゲームを1本作りました。 初版は、自分で書いたこの注意をそのまま破っていたので、作り直しています(04)。

2026-09-26 / 調べた範囲: 2025年1月〜2026年9月 / 調査 4本を並行で約6分 / 読了 約8分

01 — 制約

「なぜバズったか」は、1本ずつしか読めなかった

ヒットの分析記事はたくさんあります。ただし1本の記事が扱うのは1本のゲームで、 Steam の数字、スマホの数字、日本の配信の話は、別々の場所に散らばっています。

個人が企画を決めるときに使えたのは、自分がたまたま目にしたヒット作だけでした。 それを真似ると、1本のゲームの表面(絵柄や題材)を写すことになり、 ヒットを生んだ仕組みのほうは取りこぼします。

欲しいのは「何が流行っているか」ではなく、複数のヒットに共通する部品でした。 それを出すには、方向の違う市場を同時に横断する必要があります。

02 — 解除

4つの方向を、同時に、出典つきで調べる

AIエージェントを4本同時に走らせ、それぞれに別の市場を割り当てました。 どれにも「主張ごとに URL を付ける」「確かめられないものは未確認と書く」「数字を作らない」を課しています。

担当調べたこと
PC・Steam2025〜2026年に小さなチームから広がったヒット、同時接続・販売本数、ジャンルの伸びと飽和
ブラウザ・スマホ・Roblox日替わりパズル、Web のおもちゃ、スマホのパズルの流行、Roblox の超大型ヒットの設計
日本X・YouTube・VTuber 配信で広がったゲーム、日本で効いた理由、東京ゲームショウなど9月の季節の文脈
方法論バズの仕組みを説明した開発者インタビューや分析、短い動画の影響、AI を使ったゲームの現状、2026年後半の予測

4本とも5〜6分で戻ってきました。人が1本ずつ記事を読んでいたら、数日かかる量です。

できなかったこと(先に書いておきます)

調査では、記事のページそのものを開くことが通信の制限で止められました。 そのため数字の多くは検索結果に出る要約からの引用です。 判断に効く大きな数字(下の表の太字)は、自分でもう一度検索して要約どうしが一致することを確かめました。 それ以外の数字は「報道されている値」として読んでください。

03 — 新形式

今月の型 — 「見て一緒に遊べる、化けと見破り」

2026年に広がったゲーム

ゲーム(時期・値段)規模(報道値)核になる1行
めっちゃカメレオン
2026年6月・790円
2か月で2,000万本。2人・約2か月・広告費なし。9/10 に Switch 2 版自分の白い体を塗って、背景に化けるかくれんぼ
8番出口
2023年〜
累計300万本(2026/9/7)。映画は興収50億円超いつもと違う所を見つけたら、引き返す
Shift At Midnight
2026年7月・10ドル
7月だけで約100万本客の中から「おかしな人」を見分ける仕事
Quarantine Zone
2026年1月・20ドル
1月に約67万本検問所で、感染者を見分ける仕事
How to Fish
2026年8月・約8ドル
同時接続 約37万(8/26)。2人のチーム変な道具で釣る、友だちとの協力ゲーム
Slay the Spire 2
2026年3月・早期アクセス
同時接続 約57万実績のある続編(型というより、前作の力)
Scritchy Scratchy
2026年3月・6.99ドル
3月だけで約61万本削るたびに数字が増えていく、スクラッチくじの積み上げ
Ball x Pit
2025年10月
1年足らずで200万本玉を撃ち、合体させて強くしていくブロック崩しのローグライト
Arrows – Puzzle Escape
スマホ
2026年5月の世界ダウンロード1位見ただけで分かるルールと、すぐやり直せる短さ
NYT Pips・LinkedIn のパズル・Clues by Sam
ブラウザ
NYT は2025年に112億回解かれた全員が同じ問題を1日1問

表の上の4本は「隠れる/見つける」で揃っています。数字もいちばん大きい。 ただしこれは流行っているものの表面で、初版はここに引っぱられました(04)。 下の3本(Slay the Spire 2・Scritchy Scratchy・Ball x Pit)と、スイカゲーム・Balatro が持っている 「やめられない」「気持ちいい」の部品のほうが、ジャンルを越えて効いています。

くり返し出てきた部品

3本以上のヒットで確かめられた部品だけを残しました。上の2つが、中毒性と爽快感の部品です。

部品確かめられた作品
仕掛けて、動くのを見る(1つの入力で、画面全体が連鎖して動く)Balatro(点の予告を隠し、組んだ仕掛けが動くのを見せる)、スイカゲーム(連鎖)、Ball x Pit(撃った玉が跳ね回り、合体の組み合わせで強くなる)
数字が跳ね上がる(組み合わせを見つけるほど、点が何倍にもなる)Balatro、Scritchy Scratchy、Slay the Spire 2、Bills Must Be Paid
ルールは1つ、画面は3秒で分かるスイカゲーム、Arrows、めっちゃカメレオン
見ている人も一緒に遊べる(「そこ!」と言える)Among Us、8番出口、めっちゃカメレオン
うまくいっても失敗しても見どころになるめっちゃカメレオン(上手と下手を並べた短い動画が続いた)、Only Up!、PEAK
友だち同士の勝ち負けめっちゃカメレオン、Super Battle Golf、Liar's Bar
安い・小さい・すぐ始まるめっちゃカメレオン(790円・2人・2か月)、PEAK(4.95ドル)、How to Fish(2人)
全員が同じお題、答えを漏らさない結果Wordle(絵文字の升目)、NYT、LinkedIn(初めて遊んだ人の84%が翌日も来る)

3本には届かなかったものの、入れた部品が4つあります。こちらは仮説です。

部品(仮説)根拠
失敗しても、すぐもう一回スイカゲームの開発者は「失敗してもまた挑戦したくなる雰囲気」を挙げ、Sensor Tower は Arrows の伸びを「すぐやり直せる短さ」で説明している(2本)
遊んだ人が次の出題者になるClues by Sam は、途中の盤面をリンクで友だちに渡せる。遊んだ人の数だけ、次の問題と次の招待が増える
その夜だけのルールが、全員に同時に起きるRoblox の Grow a Garden の天気イベントや、Steal a Brainrot が決まった時刻に全サーバーで起こす出来事が、同時接続の記録を作った
配信・動画を自由にしてある魔法少女ノ魔女裁判は、配信と二次創作の決まりのゆるさが広がった理由に挙げられている

短い動画が「ゲームを知ったきっかけ」だと答えた人は36%(GameDiscoverCo・2026年4月)。 縦の画面で、最初の数秒で止めてもらえるかどうかが、そのまま入口の広さになっています。

2026年9月の型 — 「1つの入力で、画面全部が気持ちよく動く」

  1. 核 — 1つの入力で、画面全体が連鎖して動く。仕掛けてから、動くのを見る
  2. 手応え — 数字が跳ね上がる。組み合わせを見つけるほど跳ねる
  3. 分かる — ルールは3秒。見ている人も「そこ通して!」と一緒に考えられる
  4. やめられない — 1回が短く、失敗しても1秒で次。あと1回が続く区切り
  5. 共有 — 全員が同じお題。答えを漏らさない結果と、友だちとの勝負リンク
  6. 入口 — 無料・登録なし・縦の1画面。配信と動画は自由

今は、やらなかったこと

やらなかったこと理由
AI のキャラクターと話すゲーム2023年に多かった AI の登場人物は、2026年には下火です。話すほど費用がかかり、面白さを試験できない。AI を使ったと表示した Steam のゲームは、レビュー数が約半分でした
見ているだけで報酬が出る仕組みRoblox は2026年8月、流れる動画を見ると報酬が出るゲームを、子ども向けの枠から外すと決めました。Roblox の推薦も、続けて遊ばれるゲームを優先する形に変わっています
1位のヒットの遊びを、そのまま借りるめっちゃカメレオンに似た題名のゲームは、批判を浴びました。題名だけでなく遊びの核も借りない。初版はここを守れていませんでした(04)
サーバーが要る大人数の協力ゲーム流行の中心(friendslop)ですが、個人のブラウザゲームで作るには重い。代わりに「リンクで送り合う」ことで、友だち同士の対決を作りました
04 — 証拠

初版は1位の表面を写していたので、作り直した

初版『化けくらべ』で起きたこと

最初に作ったのは、絵のどこかに化けたたぬきを探し、自分も体を塗って背景に化けるゲームでした。 公開して返ってきた感想は2つです。「中毒性と爽快感が足りない」「めっちゃカメレオンを意識しすぎ」。

どちらも当たっていました。ヒット表の上の4本が「隠れる/見つける」で揃っていて、しかも1位の数字が飛び抜けていたので、 型の核に1位の遊びそのもの(体を塗って化ける)を置いてしまった。 01 で「表面を写すと仕組みを取りこぼす」と書き、05 で「写すのは部品だけ」と書いたのに、です。 そして、調査には Balatro やスイカゲームの「気持ちいい」部品がそろっていたのに、表の上に無かったので軽く扱っていました。

型は、いちばん大きい数字の作品に引っぱられる。 作ったものを説明するとき、ヒット作の名前が1つで済んでしまうなら、それは部品ではなく作品を写しています。

作り直した『一筆花火』

一筆花火 — 線を1本。夜空が全部ひらく

指で線を1本ひくと、それが導火線になります。火が走り、触れた花火玉がひらき、 その爆発が線の別の場所にも燃え移って連鎖します。点×倍率で数字が跳ね、8夜のランの間にお守りを集めて組み合わせます。 今夜の本物の月の形で、ルールが1つ変わります。

遊んでみる

型の部品を、どう入れたか

部品一筆花火では
仕掛けて、動くのを見る線を引き終えたら、あとは見るだけ。火が走り、玉がひらき、爆発が導火線の別の所に燃え移る。残りが3つを切ると、ゆっくりになる
数字が跳ね上がる点×倍率。金の玉と10連鎖ごとに倍率が上がり、全部ひらくと ×2。夜を越えるたびに12種類から1つお守りを選び、組み合わせで点が何倍にも跳ねる
すぐもう一回1夜は十数秒、1回のランは数分。散ったら「もう一回」で1秒後に次のラン
3秒で分かる「線を1本ひく」だけ。線の近くで直接火がつく玉は、引いている最中に金の輪で光る
見ている人も遊べる線を引く前の盤面は止まっていて、見ている人も「そこ通して!」と言える
友だちとの勝負同じ8夜で勝負するリンクと、いちばんの一筆を再生するリンク。再生を見た人は、同じ夜で一筆勝負ができる。どちらもサーバーなし(夜も線も URL に入る)
全員が同じお題「今夜の一筆」は、日本時間の0時に変わる同じ8夜。結果は 🎆✨💥🌑 の印と点だけ
その夜だけのルール今夜の月齢を8つに分け、それぞれルールが1つ変わる(満月は大輪、新月は金の玉が2倍、下弦は残り火、など)

近いゲームとの違い(名前と遊びの重複を、先に調べた)

最初の案「いっぱつ花火(1回押すと連鎖)」は、同じ名前でほぼ同じ遊びのブラウザゲームがすでにありました。 連鎖×ローグライトも、2026年の Steam では Cascadou・Chain Reaction・The Loopler などが出ていて、もう1つの棚になっています。 導火線の道をつなぐパズル(FUSEWORKS・Fuse Runner)もあります。ただ、どれも決まったマスや道に火を通す形でした。

この3つを合わせたものは、今回の調査の範囲では見つかりませんでした。

難しさは、ボットで測った

「最初の一筆は気持ちよく、終盤は組み合わせを考えないと届かない」曲線にするため、 8夜を通しで遊ぶボット(近い玉を順につなぐだけの線を引く)で、何夜まで越えられるかを測って目標点を決めました。

測ったこと結果
一夜目を、ランダムな1本で越えられる割合約9割(測るたびに 89〜94%。最初の一筆で失敗させない)
最初の目標点で測ったとき序盤が難しく終盤が簡単な、逆さの曲線だった(お守りで点が雪だるま式に増えるため)→ 目標点を組み直した
月ごとの差満月だけが飛び抜けて易しかった(8夜完走23%、ほかは1〜5%)→ 月の効果の強さをならした。ならした後も満月は少し易しいが、公開した夜が満月なので、入口としてそのままにした
8夜完走の割合(最後の設定。貪欲なボットが1夜に6本試す)月によって 9〜28%。人は近い玉を順につなぐだけのボットより上手に引けるので、もう少し上がるはず

測り方は _dev/hitofude-balance.mjs(月の番号と、1夜あたりに試す線の数を渡す)。

05 — 再現

同じことをやるなら

手順

  1. 方向の違う市場に分けて、同時に調べる(PC・スマホとブラウザ・自分の国・方法論の4本)
  2. どの主張にも URL を付けさせ、確かめられないものには「未確認」と書かせる
  3. 判断に効く大きな数字だけ、自分でもう一度引く
  4. ヒット作を並べ、3本以上に出てくる部品を芯にする。1本にしか無いものは、その作品の個性。足りないけれど入れたい部品は、仮説と書いて分けておく
  5. 「やらないこと」も書く。流行っていても、下火・締め出し・炎上が始まっているものは外す
  6. 部品を借りて、名前と絵と遊びの単位は変える
  7. 作ったら、ヒット作の名前1つで説明できてしまわないかを確かめる。できてしまうなら、作品を写している
  8. 名前と遊びの重複を検索する。近いものが出たら、どこが違うかを3つ言えるまで変える
  9. 難しさはボットで測る。最初の1回で失敗させない、終盤は組み合わせが要る、の2点を数字で見る

詰まりやすい所

症状原因抜け方
ヒット作の似たものができる いちばん大きい数字の作品に、型が引っぱられた 表を「何が流行っているか(表面)」と「なぜやめられないか(部品)」に分けて読む。核に置くのは部品のほう
分かりやすいが、すぐ飽きる 中毒性と爽快感の部品が入っていない 「1つの入力で画面全体が動くか」「数字が跳ねるか」「失敗して1秒で次に行けるか」を確かめる
数字がばらばらで比べられない 同時接続・販売本数・ダウンロード数が混ざっている 比べるのは同じ単位どうしだけ。規模の比較はあきらめ、部品の有無で並べる
調べ終わるころには古い 1本ずつ読んでいる 方向ごとに分けて同時に走らせる。今回は4本で約6分
出典が開けない 通信の制限や有料の壁 要約の数字は「報道値」として扱い、判断に効く数字だけ二度引く

当たったかどうかは、これから測る

型は仮説です。一筆花火は、今夜の一筆を始めた数・何夜まで越えたか・共有や勝負のリンクを押した数・届いたリンクが開かれた数を、 個人を特定しない形で数えています。数字がたまったら、このノートに結果を足します。

型が教えてくれるのは「どう作れば広がりやすいか」までです。 そこで何を見せたいか(今回なら、月夜の町に上がる花火と、自分の一筆)は、最後まで自分で決めます。

出典

数字はすべて2026年9月25日時点で報道されている値です。

他の型は 新しい形の研究 に置いています。