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需要の露天掘り

数万件のタイトルから、
空白地帯を掘る

何を作るかを勘で決めると、たいていいちばん混んでいる場所に突っ込みます。 数万件を機械で数えれば、飽和しているテーマと誰も書いていないテーマが、その日のうちに見えます。

2026-08-23 / 実例: 蔵書29,308冊 / 所要 約半日 / 読了 約5分

01 — 制約

個人には、市場調査の手段がなかった

企画を決めるとき、個人が使える方法は2つしかありませんでした。 (自分が読みたいものを作る)か、後追い(流行っているものに寄せる)です。

勘は、当たれば強いが再現しません。後追いは、気づいた時点で既に混んでいます。 その中間、つまり「需要はあるが、まだ供給が薄い場所」を数字で見つける手段は、 調査会社に頼めるお金がある人のものでした。

結果として、個人の企画は飽和市場への突入か、誰も欲しがらない独自性のどちらかに寄りがちでした。

02 — 解除

数万件を数えるのが、半日の作業になった

AIが外したのは「大量のテキストを分類・集計する手間」です。 数万件のタイトルから傾向を抽出し、表記ゆれを吸収し、意味の近いものをまとめる—— 以前なら人海戦術だったこれが、個人の手元で回ります。

ここで一番大事な発見: あらすじではなく、タイトルを数える

最初はあらすじを解析していました。うまくいきません。あらすじは書き方の癖が強すぎて、 比較できる形になっていないからです。

タイトルに切り替えた瞬間に景色が変わりました。とくに日本のWeb小説の長文タイトルは、 展開そのものを記述している。つまり機械可読な「あらすじの要約」が、 最初から数万件ぶん揃っているということです。

タイトルは宣伝文ではなく、市場が何を求めているかの申告です。
数万件あれば、それは統計になります。

03 — 新形式

需要の露天掘り — 掘る前に、地表を見る

手順は3つだけです。

  1. 数える — 数万件のタイトルからパターンを頻度集計する
  2. 薄い層を探す — 頻度の低い、しかしゼロではない要素を見つける(ゼロは需要がないだけ)
  3. 厚い層と組み合わせる — 薄い要素だけでは誰も来ない。混んでいる棚に、薄い荷物を載せる

3番目が肝です。空白地帯にそのまま行くと、需要ごと空白です。 読者が既にいる場所(=飽和ジャンル)に、まだ供給されていない要素を持ち込むのが正解でした。

実際に出た数字

要素出現数判断
悪役330飽和(=読者はいる)
魔王347飽和(=読者はいる)
献身・自己犠牲24薄い層
手紙・記録24薄い層
メタフィクション31薄い層

ここから出た企画がこうです。魔王もの(混んでいる棚)× 献身 × 発見された文書(薄い荷物)。 設計図がそのまま出てきました。費用は半日、効果は企画全体の方向づけです。

04 — 証拠

この数字から生まれた短編

百の悪行

魔王を討った勇者が、魔王の遺した「悪行目録・全百条」を一条ずつ検証していく短編。 混んでいる棚(魔王)に、薄い荷物(献身・発見された文書・メタ構造)を載せた結果です。 勘で決めていたら、たぶん普通の魔王討伐ものを書いていました。

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05 — 再現

同じことをやるなら

手順

  1. タイトルだけを集める(あらすじは比較できません)
  2. 正規表現で要素を数える。凝った自然言語処理は不要です。数千件あれば傾向は出ます
  3. 「多い」と「少ない」を並べる。ゼロの要素は候補から外す(需要がないだけの可能性が高い)
  4. 厚い層 × 薄い層の組み合わせを2〜3個作り、逆側の視点を探す

逆側の視点、とは

薄い要素をそのまま使うと、既にある少数と同じものになります。効いたのは視点を反転させることでした。

よくある形反転させた形
追放される側の話見送る側の話
正体を隠す主人公正体を暴いてしまう主人公
悪役が実は善人だと読者が知る読者だけが最後まで知らない

詰まりやすい所

症状原因抜け方
全部入りのテンプレ企画になる 見つけた薄い層を全部入れた 薄い層は1〜2本だけ。3本入れると既視感の塊になります
数字は出たが、書く気が起きない 市場に完全に合わせた 数字は方向を決めるもの。何を書きたいかは自分で決める
集計結果が偏る 1つのサイト・1つの時期だけ見ている 手元の蔵書など、別の母集団を混ぜる

この方法が教えてくれるのは「何が売れるか」ではありません。 「どこが空いているか」だけです。そこに何を置くかは、最後まで人間の仕事です。

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